KIZASHI

ちょっと聞いてー。最近おじいちゃんがボケちゃって大変なのよ〜。
もうね、連休が近くなるともうソワソワしちゃってね、やーねー。
引退してサンデー毎日のご身分になって何十年経つと思ってるんだか・・・

次は北海道行くだの、九州行くだのって、なんだか若い頃の記憶と混濁してるみたいなの。

乗るって言ってももう身体も付いて行かないだろうし、当時のお友達もみんな先いっちゃったしね。
やっぱりおじいちゃんも男の子なのよ、所詮は。若かりし頃の無謀が忘れられないのねー。
昔トンネルでつながってた新潟って言う都市が北の方にあったみたいなんだけど、
そのトンネルでね、おじいちゃんとりつかれちゃったみたいなの、スピードの向こう側ってやつに。
でもね、うちのおじいちゃんは若い頃は日本中をバイクで走り回ってたみたいなのよ。

えーやだー、当時はまだガソリンよ？化石燃料で走る化石だもの笑えないわよね。
なんて言ったっけかな？CBR1000RRとか言うバイクだったみたい。当時は結構速い部類だったのかなー。
電脳化した今ではハンドルなんてわざわざ手を添えなくても曲がってくれるし、車庫入れだってオートよ。
あの棒みたいなハンドルでよく曲がるわよね。あたし達の世代じゃ考えられないわ。
スピードだっておじいちゃんの時代は300km/hくらいで風圧に耐えて必至で走ってたみたいだけど、
今じゃロードアシスタンスデバイスのおかげで300km/h巡航は寝てても移動できちゃうわよね。

しばらく熱が冷めるまで放っておこうと思ったんだけどね、納屋から昔の服とか出してきたみたいだから、
とりあえず干しておいてあげたわ。あまりにも不憫というかモウロクしちゃってかわいそうになったわ。
いったいどうするのかしらね？おじいちゃん。しばらく見守ってみることにするわ。

ジェニファー・・・

すごい勢いで通り抜けていきますね、一日一日が。ほんと家と職場の往復で終わる一週間。
もう週末のたびに東京と新潟を往復することはありません。寂しい気持ちと澄み切った新しい気持ち。

この調布の洗濯して寝るだけの家、半年お世話になったんだけど、いまいち自分の家な気がしない。
新しい生活を夢見てたからか、ここに長く住む気分になれなくて、半年経った今でも他人の家みたいな気分。

そして、いよいよ今週末から荷物の搬出入を開始。向こう3週間に渡る孤独な戦いが幕を開けるのであった。

何度も何度もあなたに今日も新たな恋をする
何年経っても何があろうとあなたはONLY ONE

疲れ果てて子供のように眠る
助手席のあなた見て思う
写真立ての中の二人のままで色褪せぬように

ジェニファー・・・